新春座談会
世界都市東京 西側の玄関口・立川で、観光の未来を語る
425万人の人口を持つ多摩地域のセンターポジション、立川。国内外から来訪者を呼び込む大東京西部の玄関口(ゲートウェイ)として今、立川はそのポテンシャルを問われています。2026年のスタートに際し、立川の観光振興に欠かせない団体の代表・責任者の皆さまをお招きし、立川観光の未来をテーマに語って頂きました。
多世代間で多様化するニーズ 新たな課題に直面する立川観光
まずは皆さまの現在感じている立川観光の魅力、そして課題についてお聞かせください
八木 「あけましておめでとうございます。皆さま。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。立川の観光を取り巻く環境は日々変化していますが、地域の皆さまと一緒にその魅力を高め、広げていくことが、今まで以上に大切になってきています。本日は新春という節目に、観光をテーマに語り合う場をいただきました。立川のこれからの可能性を、ざっくばらんにお話しできればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします」
川口 「立川は交通の結節点として街が大きくなってきた歴史を持ちます。人流の増加に伴い、国営昭和記念公園をはじめスポーツ、アート、イベントなど、都市型観光の資源に溢れ、賑わいを持つ街になってきました。ただ今後の発展には、同じ東京都内でも区部にはない独自の魅力は何なのかを再度、見直し、仕掛けていく必要があります。現在、商工会議所が進める東京山間部地域との広域連携『TTW(東京多摩西部広域経済連携協議交流会議)』は、新しいエリア価値を創出する大きな可能性を秘めていると思っています」
土門 「中央線の東西はもちろん、青梅線、南北を走る多摩都市モノレール、川崎とをつなぐ南武線と、今、1日約15万4千人のお客さまがご乗車される立川駅は、中央線で新宿、東京駅に次ぐ大きなターミナル駅となっています。その分、責任も大きなものに。東西南北すべての玄関口として、立川駅に着いたらワクワクして頂けるような仕掛けが求められています。駅を降りてから目的地へと、街とのつながりをどう作っていくことが出来るか、さまざまなモビリティとの連携が必要不可欠になっています」
辻野 「都市と自然が融合した立川にある国営昭和記念公園は、国土交通省が所管する全国の国営公園の中でも有名な公園の一つで、日本一の都市公園とも評され、立川で大きな存在感を放っていると認識しています。過去には米軍基地だった時代もあったところ、地元からの強い要望で公園になったという歴史も聞いています。地域の思いが詰まったこの貴重なアセット(資源)を今後も繋いでいくためにも、時代と共に変わり続ける、他にはない取り組みが求められていると考えます。今の魅力を発展させながら、次世代へどれだけ良いバトンを渡せるかが使命と感じています」
廣瀬 「立川ではエンタメ、スポーツ、文化、商業がどんどん発展しています。公園の来園者動向もコロナ前とは変わっています。多様化しているニーズに応えていくには、自分たちだけの力では限界があります。立川観光コンベンション協会との連携により設置することが出来た観光の情報発信拠点『TiSTORE』はこれまでにない協働の形です。ワークショップなども含め、新たな魅力を発信していけたらと思っています。地域の方々とのコラボや連携が今後、ますます求められていくと思っています」
八木 「私は約半世紀に渡り、東京西部の多摩地域における立川という街の変化を見てきました。街としての大きな発展がある一方、東京のベッドタウンとしての多摩エリアには急激な高齢化社会、少子化という、これまでになかった大きな時代変化に伴う課題があります。観光施策ではよく世代別のターゲットを絞る必要が求められますが、どの世代をメインにし、どの世代を見ないという偏った施策は、今後、街として大きなひずみを生む危険性があります。世代間を越え、バランスのとれた階層にアプローチし、これまでターゲットになっていなかった新しい層も対象にしていく必要があると感じています」
立川観光の課題である回遊性、滞在性についてはどう育てていけるでしょう
川口 「八木会長が言われた通り、今は社会全体が少子化など未曾有の時代へと入っています。そんな中で回遊性、滞在性の向上は喫緊の課題。今までは点の集客でしたが、線となり面になって広がっていかなければ、これ以上の発展、それどころか維持も難しくなっていくでしょう。そのためには情報の出し方、受け方にも工夫が必要です。駅を降りてすぐ『今、この街でどんな体験ができるか』を知らせるような新しい情報の伝え方。また回遊していただくための歩行者の快適性など、今一度、ハードも含めた街づくりから観光施策を見直していく必要があると思います。また都市観光という視点ではグルメやショッピング、音楽、演劇、アートといった文化、そしてスポーツや街並み、夜景など、様々な体験をどう組み合わせて、包括的な価値を作るかを、エリア全体の連携の中で考えていかなければと思います」
土門 「皆さんのおっしゃる通り、現状に甘んじて居ては発展は望めない時代です。立川や、この街を玄関口にした多摩地域の観光資源は豊富にあります。駅はここをスタート地点として、地域の新たな再発見や交流が生まれる場所にならなければなりません。そこから目的地に足を運んでもらうモビリティMIXによる、シームレスな連携が求められています」
辻野 「回遊性、滞在性の向上のために一番必要なことは、訪れた人に『居心地がよい』と思ってもらえる安心感のある空間をつくることだと思います。観光のために何かやるのではなく、そこにいる人たちにとって、魅力あるまちづくり、やすらぎ感や安心感、期待感などを感じるまちをいかに作るかが重要です。そうしたまちづくりを進める上で都市公園は貴重なアセット(資源)です。地域の方の視点で立川の特性を活かしながら居心地の良い空間をいかに作っていくか、『昭和記念公園という空間、資源を使い倒す!』くらいの発想で、人間中心の視点で新しいイノベーションを起こしていってほしいと思います」
廣瀬 「当公園は都市型の公園であり日帰り利用が多いのですが、滞在時間は平均2~3時間、来訪まで1.5時間圏内のお客様が中心です。主な目的は季節の花と自然や景色を楽しまれる方が多いようです。立川駅をはじめ公共交通機関を使って来園される方の割合が非常に多くなっています。このようなお客様に街へ回遊してもらうためには、その目的作りや、土門駅長がおっしゃっていた快適なアクセス手段が必要だと思います。回遊性向上を図る取り組みに、公園としても協力していければと考えています」
八木 「わたしは業界の出張で全国あちこちの地方都市に行くことも多いのですが、博多や大阪などは交通至便であり、目的地に辿りつくための分かりやすい案内、外国語表記など、海外から訪れた人でも不安なく辿り着けるよう整備されています。立川における回遊性向上の基礎となるこの部分も、まだまだ不十分なように思います。そこは行政のご努力もお願いしたい。また滞在性を促すために、立川という街だけだとコンベンション機能などのハード面も不足しています。そういった面でも、広域エリア一体となって回遊性、滞在性の向上を目指す東京山間部との広域連携組織『TTW(東京多摩西部広域経済連携会議)』をスタートさせたわけですが、この取り組みについて、皆さんはどのようなビジョンをお持ちでしょう」
TTWの取り組み
「来訪者目線による、市町村の枠を超えたエリア誘客」に新たな活路を開く
※TTWとは?
TTW(東京多摩西部広域経済連携協議会)とは立川をゲートシティに、東京山間部の地域と一体となって東京西側のブランド力を高め「情報発信の強化」「回遊性の向上」「事業者間交流」を促進していくため、2025年4月に発足した新たな連携組織。このエリアだからこそ実現できる、多様で奥行きのある観光施策に挑戦している。
〇構成団体
立川商工会議所・青梅商工会議所・あきる野商工会・日の出町商工会・青梅市観光協会・奥多摩観光協会・あきる野市観光協会・日の出町観光協会・檜原村観光協会
事務局:立川観光コンベンション協会
川口 「これまで立川が広域連携の旗振りをすることには若干、躊躇もありました。『立川一人勝ち』などと言われて反発もあったので、あまり目立つ動きは…とも思っていました。しかし東京山間部エリアの皆さんが、立川との連携に大きな期待を寄せてくださっていることが率直に嬉しい。立川という1つの街では成しえない回遊性や滞在性向上を、『TTW』という組織では広域なエリア一体となって取り組める。立川に滞在して、日中は青梅や奥多摩、秋川渓谷のワイルドネイチャーを楽しむという提案は、新しい来訪者層を立川に取り込んでいく大きな可能性を秘めていると思います。立川の事業者の皆さんにとっても、一段の発展の契機としていただけるのではと、期待しています」
土門 「JRでも立川駅を発着に、車内で沿線の地酒を楽しむ臨時の利き酒列車など様々な楽しい電車を走らせたいと思っています。面として捉えた際のターゲットは200万~500万人規模。広域連携への準備は正直、まだ不十分ではありますが、地域と交通事業者が一体となって取り組んでいくことが理想だと思います」
辻野 「昭和記念公園と奥多摩、青梅、秋川渓谷の自然は質が異なるものの、それぞれ大きな魅力を有しています。双方の強みを生かし、つながり、連携しながら誘客を図ることができると思っています。双方の来訪者の自然への指向は類似していると思うので、東京山間部のワイルドな自然を楽しむきっかけとして昭和記念公園を利用いただくなど、お互いの強みを生かす新しいアプローチができると考えています」
廣瀬 「自然体験やアウトドアに興味があっても、そのきっかけがつかめない人も多いと思います。豊かな自然を楽しむ上で、奥多摩等の自然公園は基本的に自己責任ですが、都市公園には安全安心に楽しめる環境があります。自然やアウトドアに興味のある人たちに対して、公園がその入口としての役割を担えればと思います」
「人との交流で生まれる「ごちゃまぜ」こそエネルギー ―事業者間、市民、他地域― 」
川口 「辻野所長、廣瀬センター長のお話を聞いて、公園の平均滞在時間や流入経路など、公園を訪れる人たちの滞在性を伸ばす可能性が多くあることを感じています。夜の時間を活用したナイトエコノミーの企画や、ヨガや太極拳などの早朝の企画、また過去にあった音楽イベントの復活など、今後の可能性はいかがですか?」
廣瀬 「実はコロナ前に音楽イベント復活の話もありました。東京都内で駅にも近く、日帰りで楽しめる環境のため、オファーは今も多くあります。一方、近隣に住宅やマンションが増加しているため、住民の皆様に理解を得られるかは大きなポイントです。いきなり大規模なものは難しいですが、小規模やアコースティックなものなど、実施可能な方策を探っていきたいと思っています」
辻野 「近年、夏は酷暑となり、昼間の来訪者は激減するなどの変化が見られます。一方で、昨年初めてお盆に夜の開園を行い大変好評でした。昭和記念公園を取り巻く環境が変化する中、時代とともに変化をしていかなければ、生き残れないと思います。また、新しい取り組みを行う際には“みんなで楽しむ”ことが必要不可欠です。そして、交流で生まれる“ごちゃまぜ”こそ、都市のダイナミズムであり、エネルギーです。昭和記念公園がその一翼を担い、昭和記念公園に関わる人にとって居心地のよい空間を作り、みんなが楽しむ交流の場として貢献できる存在になれればと思います」
土門 「辻野所長の言う通り、人との交流こそが、人に元気を与えるものです。先ごろ、駅の南北自由通路を使ったスポーツ団体とのイベントを行いましたが、行き交う人とも交流が生まれており、笑顔が溢れていたことが印象的でした。皆さんと同じ気持ちで取り組みながら、駅という空間がそうした交流が生まれる拠点、情報発信基地となれるよう尽力していきたいと思います」
廣瀬 「公園も地域のみなさんと一緒に、様々な新しいことに取り組んで来ています。例えば駅、公園、商業施設の個別のイベントも、皆で話合いながらタイミングを合わせるなど、情報共有や相互送客などで街にはさらに活気が出ます。回遊性はもちろん、情報発信力も飛躍的に向上すると思います」
八木 「今回、皆さんのお話は、思わず頷いてしまう話から、新しい発見につながる話まで、お役立ち情報が満載でした。お話でも多く出ていましたが、立川の事業者や団体だけでなく、立川の街の人や他地域の人々も含めた、人と人との交流が、今後の立川の観光促進における大きな可能性の原資だと感じました。立川観光コンベンション協会(=TTCB)では2023年から観光現場に携わる各組織の方々と、『観コンMTG』という月例会議を重ねています。こうした『横櫛を刺す』『ネットワークを作る』役割は、まさにTTCBの使命だと考えています。2026年、協会として、そうした新しい人との出会いによる可能性を、より多く生み出してまいりたいと思います。
本日は皆さま、ありがとうございました」




